この記事では、芸能事務所業界のホワイト企業ランキングを、平均残業時間と有給消化率の2指標から算出した「激務度」で比較・紹介します。
そこで今回は各社の 「平均残業時間(1か月)」 と 「有給休暇消化率」 を OpenWork掲載の最新データに基づいて調査しました。
激務度 は 残業時間(時間)+(100-有休消化率(%)) で算出しており、値が低いほど「残業が少なく有休消化率が高い」=ホワイト度が高い企業です。
※激務度算出例:残業20時間・有休消化率70%の場合 → 激務度=20+(100-70)=50(ポイント)となります。
【一覧表】芸能事務所ホワイト企業ランキング
早速、OpenWorkのデータから算出した「激務度」が低い順に並べた、芸能事務所のホワイト企業ランキングを見ていきましょう。激務度が低いほど、ワークライフバランスが保ちやすい傾向にあると考えられます。
| 企業名 | 残業時間 | 有休消化率 | 激務度 |
| 株式会社劇団俳優座 | 28.7 h | 95.3 % | 33 |
| 東京俳優生活協同組合 | 29.7 h | 68.5 % | 61 |
| アソビシステム株式会社 | 34.6 h | 72.8 % | 62 |
| 株式会社ホリプロ | 32.7 h | 55.4 % | 77 |
| 株式会社スターダストプロモーション | 25.4 h | 45.3 % | 80 |
| 株式会社劇団ひまわり | 42.2 h | 60.6 % | 82 |
| 株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ | 37.0 h | 46.4 % | 91 |
| 松竹芸能株式会社 | 47.3 h | 49.1 % | 98 |
| 株式会社ワタナベエンターテインメント | 43.7 h | 43.8 % | 100 |
| 株式会社レプロエンタテインメント | 34.6 h | 26.7 % | 108 |
| 株式会社オスカープロモーション | 37.7 h | 26.9 % | 111 |
| 株式会社プロダクション尾木 | 21.7 h | 0.0 % | 122 |
| 株式会社サンミュージックプロダクション | 70.8 h | 26.3 % | 145 |
| 株式会社スウィートパワー | 62.6 h | 7.5 % | 155 |
出典:OpenWork(アクセス日:2024年10月18日)
※本ランキングはOpenWorkに投稿されたデータを基に作成しており、特定の年度や部署、個人の経験を反映している場合があります。あくまで参考値としてご覧ください。
芸能事務所ホワイト企業の紹介
ランキングに掲載された各企業について、事業内容やOpenWorkのデータ、評判の傾向を個別に解説します。
株式会社劇団俳優座
【概要】
1944年設立の歴史ある劇団であり、演劇制作・公演を事業の中核に据える芸能事務所です。舞台俳優のマネジメントを中心に、映画やテレビ、CMへの出演も手掛けています。また、付属の演劇研究所を運営し、後進の育成にも力を入れている、演劇界の重鎮的存在です。
【データ】
- 平均残業時間:28.7 h/月
- 有休消化率:95.3 %
- 激務度:33
【評判】
OpenWorkの評価スコアでは「法令順守意識」が3.3と高く、安定した組織運営がうかがえます。特筆すべきは95.3%という極めて高い有休消化率で、これは演劇公演の合間などに長期休暇を取得しやすい、プロジェクトベースの業務特性を反映している可能性があります。業界内では異例の休みやすさと言えるでしょう。
【まとめ】
業界平均を大きく下回る残業時間と驚異的な有休消化率から、ワークライフバランスを非常に重視できる労働環境が期待される企業です。
東京俳優生活協同組合
【概要】
1960年に設立された、俳優自身によって運営される生活協同組合法人というユニークな形態の組織です。声優のマネジメントに強みを持ち、業界内で「俳協」の通称で知られています。多数の声優・ナレーター・俳優が所属し、付属の「劇団俳協」では舞台公演も行っています。
【データ】
- 平均残業時間:29.7 h/月
- 有休消化率:68.5 %
- 激務度:61
【評判】
口コミ件数は多くないものの、公開されているデータからは、残業時間が30時間を下回り、有休も7割近く消化できるなど、安定した労働環境が示唆されます。生活協同組合という組織形態が、一般的な営利企業に比べて従業員の働きやすさを重視する文化につながっている可能性があります。
【まとめ】
協同組合という安定した組織基盤のもと、特に声優マネジメントの分野でバランスの取れた働き方が可能な企業といえます。
アソビシステム株式会社
【概要】
「HARAJUKU CULTURE」を軸に、日本のポップカルチャーを国内外に発信するカルチャープロダクションです。きゃりーぱみゅぱみゅなどを筆頭に、アーティスト、モデル、クリエイターといった多彩なタレントを擁し、イベント企画やメディア運営、地方創生事業まで幅広く手掛けています。
【データ】
- 平均残業時間:34.6 h/月
- 有休消化率:72.8 %
- 激務度:62
【評判】
OpenWorkのスコアでは「20代成長環境」(3.5)や「風通しの良さ」(3.4)が高く、若手社員が活躍しやすい活気ある社風がうかがえます。70%を超える有休消化率は、伝統的な芸能事務所と比較して、より現代的で柔軟な働き方が浸透していることを示唆しています。
【まとめ】
比較的休みが取りやすく、若手が成長できる機会も多い、先進的なカルチャーを持つ企業と言えるでしょう。
株式会社ホリプロ
【概要】
1960年創業の大手総合エンターテインメント企業です。タレントの発掘・育成を強みとし、「ホリプロタレントスカウトキャラバン」は長年にわたり多くのスターを輩出してきました。俳優、タレント、音楽、舞台制作、映像事業など、多角的な事業展開が特徴です。
【データ】
- 平均残業時間:32.7 h/月
- 有休消化率:55.4 %
- 激務度:77
【評判】
OpenWorkには200件以上の口コミが寄せられており、業界内では情報透明性が高い企業です。データを見ると、残業時間は比較的抑えられており、有休消化率も50%を超えていることから、大手としての労務管理体制が機能している様子がうかがえます。口コミでは、マネージャー職と内勤職での働き方の違いを指摘する声も見られます。
【まとめ】
業界を代表する大手企業として、比較的バランスの取れた労働環境が整備されている企業です。
株式会社スターダストプロモーション
【概要】
1979年設立、所属タレント1000名以上を抱える国内最大手の芸能事務所の一つです。俳優・女優のマネジメントに定評があり、数多くの主演級タレントを輩出しています。音楽レーベル(SDR)や映像制作(SDP)といったグループ会社も擁し、総合エンターテインメント企業として確固たる地位を築いています。
【データ】
- 平均残業時間:25.4 h/月
- 有休消化率:45.3 %
- 激務度:80
【評判】
大手事務所でありながら、月間残業時間が25.4時間と非常に低い点は高く評価できます。一方で、有休消化率が50%を下回っていることから、日々の業務はコントロールされていても、長期休暇の取得には依然として課題がある可能性が示唆されます。これは、タレントのスケジュールに密着するマネージャー職の多忙さを反映しているとも考えられます。
【まとめ】
日々の残業は少ないものの、休暇の取得しやすさには改善の余地がある、メリハリを求められる職場環境と推察されます。
株式会社劇団ひまわり
【概要】
1952年設立の老舗で、特に子役の育成とマネジメントにおいて国内最大級の実績を誇ります。全国に養成所を展開し、俳優の育成から舞台、映画、テレビ番組の企画制作まで一貫して手掛けています。
【データ】
- 平均残業時間:42.2 h/月
- 有休消化率:60.6 %
- 激務度:82
【評判】
有休消化率が60%を超えており、休暇取得への配慮がある文化がうかがえます。しかし、OpenWorkのスコアでは「人材の長期育成」(2.0)や「社員の士気」(2.6)が低めとなっており、休みは取れても、キャリアパスや仕事のやりがいの面で課題を感じる社員がいる可能性があります。
【まとめ】
休暇制度は比較的整っている一方で、社員の長期的なキャリア形成や満足度の面では改善が期待される企業です。
株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ
【概要】
ソニー・ミュージックエンタテインメント傘下の総合芸能プロダクションです。ミュージシャン、俳優、お笑い芸人、声優など、幅広いジャンルのタレントが所属しており、ソニーグループの持つ豊富なリソースを活用した多角的な事業展開が強みです。
【データ】
- 平均残業時間:37.0 h/月
- 有休消化率:46.4 %
- 激務度:91
【評判】
ソニーグループの一員であるため、「法令順守意識」のスコアが3.3と高く、コンプライアンス体制がしっかりしていることがうかがえます。労働時間は業界標準レベルで忙しいものの、大手企業の安定した基盤のもとで働ける安心感があります。ただし、口コミ回答者数が4名と少ないため、データは参考程度と捉えるのが賢明です。
【まとめ】
大手資本ならではの安定した労務管理のもと、エンタメ業界のダイナミズムの中で働くことができる企業です。
松竹芸能株式会社
【概要】
映画会社・松竹をルーツに持つ老舗の芸能事務所で、特にお笑い芸人や落語家のマネジメントに強みを持っています。大阪の「心斎橋角座」を拠点とし、吉本興業と並ぶ関西のお笑い界の雄として知られています。
【データ】
- 平均残業時間:47.3 h/月
- 有休消化率:49.1 %
- 激務度:98
【評判】
データからは月50時間近い残業が常態化している可能性が示唆され、業務負荷は高いと考えられます。有休消化率が50%弱であることから、多忙ながらも休暇取得が全く不可能ではない環境のようです。口コミ回答者数が4名と少ないため、あくまで傾向として捉える必要があります。
【まとめ】
残業時間は多い傾向にあるものの、休暇取得も一定程度可能な、業務量の多い職場環境であると推察されます。
株式会社ワタナベエンターテインメント
【概要】
お笑い芸人、俳優、文化人まで幅広いジャンルのタレントをマネジメントする大手事務所です。ワタナベエンターテイメントカレッジなど、系列のスクール運営を通じて新人発掘・育成に非常に力を入れているのが特徴です。
【データ】
- 平均残業時間:43.7 h/月
- 有休消化率:43.8 %
- 激務度:100
【評判】
残業時間が長く、有休も取りにくいというデータから、労働集約的な環境であることがうかがえます。OpenWorkのスコアでは「風通しの良さ」(3.2)は高いものの、「人材の長期育成」(2.3)が低く、活気はあるが人の入れ替わりも激しい、プレッシャーの高い職場である可能性が示唆されます。
【まとめ】
オープンな社風のもとでダイナミックな仕事が経験できる一方、社員には相応の長時間労働が求められる企業です。
株式会社レプロエンタテインメント
【概要】
俳優、モデル、アーティストのマネジメントを主軸とする有力事務所です。映画やドラマなどの映像コンテンツ制作にも積極的に関わっており、PR事業部門も擁しています。
【データ】
- 平均残業時間:34.6 h/月
- 有休消化率:26.7 %
- 激務度:108
【評判】
残業時間は業界平均レベルですが、有休消化率が非常に低い点が懸念されます。これは、常にタレントのスケジュールに対応する必要があるため、休みたくても休めないという業界特有の文化を反映している可能性があります。「常に稼働している」ことが求められる、緊張感の高い職場環境が推察されます。
【まとめ】
休暇の取得が困難であることから、プライベートとの両立には相当な覚悟が求められる労働環境と考えられます。
株式会社オスカープロモーション
【概要】
「全日本国民的美少女コンテスト」で知られ、長年にわたりモデル・女優のマネジメントで業界を牽引してきた大手事務所です。「美の総合商社」との異名を持ち、約6000名のタレントを擁して広告やメディアで強い影響力を持ってきました。
【データ】
- 平均残業時間:37.7 h/月
- 有休消化率:26.9 %
- 激務度:111
【評判】
OpenWorkの評価スコアが全体的に低く、特に「20代成長環境」(1.9)や「人材の長期育成」(2.1)といった項目は厳しい評価となっています。低い有休消化率と合わせ、若手社員が成長しにくい高圧的な環境である可能性がうかがえます。
【まとめ】
データや評価スコアからは、ワークライフバランスの確保が難しく、プレッシャーの強い労働環境であることが示唆されます。
株式会社プロダクション尾木
【概要】
仲間由紀恵や石坂浩二など、実力派の俳優・女優が多数所属する老舗事務所です。テレビや映画で活躍するベテランタレントのマネジメントに強みを持ち、安定した経営基盤を築いています。
【データ】
- 平均残業時間:21.7 h/月
- 有休消化率:0.0 %
- 激務度:122
【評判】
このデータは回答者2名のみに基づくため、信憑性には注意が必要です。残業時間が非常に少ない点は魅力的ですが、有休消化率が0%というのは極端な数値であり、データの異常値か、もしくは休暇が全く取れない特殊な文化が存在する可能性を示唆します。この点については、追加の情報収集が不可欠です。
【まとめ】
日々の残業は少ない可能性がありますが、休暇取得が極めて困難である可能性があり、働きやすさの判断には慎重な見極めが必要です。
株式会社サンミュージックプロダクション
【概要】
アイドルからお笑い芸人、俳優まで幅広いジャンルのタレントを擁する、歴史の長い大手芸能事務所です。音楽出版や新人開発部門も持つサンミュージックグループの中核を担い、総合的なエンターテインメント事業を展開しています。
【データ】
- 平均残業時間:70.8 h/月
- 有休消化率:26.3 %
- 激務度:145
【評判】
今回のランキング対象企業の中で最も残業時間が長く、非常に多忙な労働環境であることがデータからうかがえます。OpenWorkのスコアでも「待遇面の満足度」(2.6)や「人材の長期育成」(2.7)が低く、過酷な労働に見合った報酬やキャリアアップが実感しにくいと感じる社員がいる可能性があります。
【まとめ】
データからは極めて労働時間が長い職場環境が示唆され、ワークライフバランスの実現は非常に難しい企業と考えられます。
株式会社スウィートパワー
【概要】
女性俳優のマネジメントに強みを持つ芸能事務所で、映画やドラマの主演クラスを多数育成しています。男性俳優部門の「スパイスパワー」や音楽部門も展開しています。
【データ】
- 平均残業時間:62.6 h/月
- 有休消化率:7.5 %
- 激務度:155
【評判】
残業時間が非常に長く、有休消化率も10%に満たないというデータは、極めて労働集約的な職場環境を示しています。社員には仕事へのほぼ完全なコミットメントが求められる文化であると推察され、今回のランキングでは最も激務度が高い結果となりました。
【まとめ】
公開されているデータに基づけば、今回調査した企業の中で最もワークライフバランスの確保が困難な労働環境の一つです。
芸能事務所で本当にホワイトな企業をさがすには入念な調査が必要!
ここまでデータに基づいたランキングを紹介してきましたが、この数値だけを鵜呑みにするのは危険です。特に芸能事務所という特殊な業界では、数字の裏に隠された実態を読み解く必要があります。
ランキングはあくまで客観的な「とっかかり」に過ぎません。本当に自分に合った「ホワイト企業」を見つけるためには、ここからさらに一歩踏み込んだ、定性的な情報収集が不可欠となります。
ホワイト企業か判断する方法1:関係者に聞く
最も信頼性が高いのは、内部の人間からの一次情報です。可能であれば、転職サイトのスカウトサービスや大学のOB・OG名簿、SNSなどを活用して、企業の現社員や元社員に話を聞く機会を探しましょう。
その際は、漠然と「働きやすいですか?」と聞くのではなく、「マネージャー職と本社管理部門では、働き方にどのような違いがありますか?」「残業代は1分単位で支給されますか、それともみなし残業制度ですか?」といった具体的な質問を投げかけることが重要です。リアルな情報を引き出すことで、入社後のギャップを最小限に抑えることができます。
ホワイト企業か判断する方法2:全ての口コミサイトを入念にチェック
OpenWorkをはじめとする口コミサイトは、使い方次第で強力な情報源になります。一つの極端な意見に惑わされず、複数の口コミを横断的にチェックし、共通して言及されている「傾向」を掴むことが大切です。
特に注目すべきは、「どのような立場の人が、いつ投稿したか」です。例えば、5年前に退職したマネージャーの口コミと、半年前に入社した経理担当者の口コミでは、見ている景色が全く異なります。複数の口コミから、組織の構造や文化の変遷を立体的に読み解く視点を持ちましょう。
転職エージェントをフル活用する
エンターテインメント業界に特化した転職エージェントは、公にはなっていない内部情報を持っていることがあります。彼らは企業の人事担当者と直接コミュニケーションを取っているため、特定の部署の雰囲気や、求人募集の背景にある組織の事情(例:事業拡大による増員なのか、離職による欠員補充なのか)などを把握している場合があります。
エージェントは転職希望者の味方です。「ワークライフバランスを重視したい」「将来的に企画部門へキャリアチェンジしたい」といった自分の希望を正直に伝え、それに合致する企業を紹介してもらうことで、ミスマッチのリスクを大幅に減らすことができます。
【業界特有の注意点】マネージャー職と内勤職の働き方の違い
芸能事務所の「激務度」を考える上で最も重要なのは、職種による働き方の根本的な違いです。OpenWorkなどの平均スコアは、これら異なる職種の平均値であるため、自分の希望する職種の実態とは乖離している可能性があります。
マネージャー職は、タレントのスケジュールに合わせて動くため、勤務時間は本質的に不規則です。早朝のロケや深夜の収録、地方や海外への長期出張、休日返上でのイベント対応は日常茶飯事です。定時という概念はほぼなく、常にタレントや関係各所からの連絡に対応する必要があります。その分、大きなプロジェクトを成功させた時の達成感や、タレントの成長を間近で支えるやりがいは何物にも代えがたいでしょう。
一方で、経理、人事、法務、ファンクラブ運営などの内勤職は、比較的規則的な勤務形態であることが多いです。もちろん、決算期やイベント前などの繁忙期はありますが、基本的にはカレンダー通りの休日が取得でき、勤務時間も予測しやすい傾向にあります。
自分が求める働き方がどちらに近いのかを明確にし、口コミや面接で「希望職種の平均的な一日のスケジュール」を具体的に確認することが、入社後のミスマッチを防ぐ上で極めて重要です。
まとめ
芸能事務所への転職を成功させるためには、データと実態の両面から判断することが不可欠です。本記事で紹介したランキングのような客観的データを活用して大まかな傾向を掴み、候補となる企業を絞り込みます。その上で、関係者へのヒアリングや口コミサイトの精査、転職エージェントからの情報収集といった定性的な調査を行い、自分が希望する「職種」のリアルな働き方を深く理解することが重要です。データという地図を手に、自分自身の足で情報を集めることで、初めて自分にとっての「ホワイト企業」にたどり着くことができるでしょう。



